住環境整備と福祉用具の活用/生活動線上の住環境整備

2-1.家庭内における不慮の事故

総務省統計局人口動態調査データーを基にグラフ作成2013年 人口動態調査
「総務省統計局・人口動態調査/e-Stat」では「家庭内における不慮の事故」に関しての統計データーを公表しています。それによると「不慮の溺死・溺水」、「その他の不慮の窒息」、「転倒・転落」が死因の3大要因で81%を占め、この中には65歳以上の高齢者が多く含まれていることがグラフから分かります。取り分け3大死因の中で65歳以上の高齢者を対象とした場合、「不慮の溺死・溺水」の割合が90.5%と高い数値を示しています。
「入浴環境の改善提案」ではこのような事故を未然に防ぐための改善提案を、入浴方法と用具の活用と云う観点に絞り、やさしく解説いたします。
入浴効果
いーーい、湯だな、ア・ハン、いーーい、湯だな
身体が清潔になり、温められることで血液の循環がよくなり、新陳代謝が活発になることで老廃物を外に出したり、痛みが軽減されたりと色々な効果があります。また、生活にメリハリを与え、お風呂に入ること自体が楽しみを与えてくれます。
おーーと、危ない、危ない
お風呂は、滑りやすくバランスを崩しやすい、家庭内でも最も事故が多い場所と云う事が、上記のグラフからも分かります。裸になった状態での行為であるため、転倒や転落、傷に対しても直接ダメージを受け易いことによります。しかも、そんな場所にも関わらず複雑な動作をたくさんしなければなりません。
浴室の中では特に危惧される動作としては、③・⑪/★の「浴室の出入り」口の段差を乗り越える時と、⑥・⑨/※の「浴そうの出入り」が挙げられます。
居室から入浴に至る一連の動作/危険がいっぱい

2-3.入りたいけど・・・チョット不安

  • 浴そう縁のまたぎ動作

    ◎浴そう縁のまたぎ動作
    お風呂で掴まる所が無いため、浴そう縁のまたぎ動作が不安定となる。

  • 浴そうの縁の高さ

    ◎浴そうの縁の高さ
    浴そうの縁が高すぎるため、足があがらない。

  • 脱衣所からの段差

    ◎脱衣所からの段差
    脱衣室から浴室へ入る際、扉の出入りでバランスを崩し転倒しそうになる。

身体のバランスを崩しやすい方、足を上げると身体が不安定となる方、この様な方が入浴する場合には入浴動作をチョット見直すことで、安全にしかも楽に入浴いただけます。

入浴動作の見直し(立位入浴/座位入浴)

一般的な入浴方法として「立位入浴」と「座位入浴」が上げられます。
片足立ちでバランスが保てる方は「立位入浴」で、不安定な方は「座位入浴」が適していると考えられます。
  • 立位入浴」は、健常時に行っていた慣れた動作のため、混乱なくできる動作です。場所を大きくとるような道具も必要としません。しかし、バランスを崩したり、浴そうの縁に脚を引っかけるなど、転倒するリスクが有ります。そのため立位姿勢を保つために「手すり」が重要な役割を果たしています。
  • 座位入浴」は、転倒を心配せずに安全に浴そうへの出入りができます。腰掛けのための「入浴台」や、「入浴いす」が必要になるので、浴室のスペースや動作のし易さによって台の形状を考慮しなければなりません。また、座位入浴の場合においても「手すり」が必要となります。
介助者の立場では、「立位入浴」の場合、立位姿勢を保つために対象者の身体を支えるなどの介助が伴うことがあります。それに比べ「座位入浴」の場合は、浴そうをまたぐ時は座った状態での動作で片足ずつ脚を持ち上げ、座る向きを変える程度の動作のため、介助負担の軽減につながります。
手すり設置例
入浴台設置例
注)入浴方法については全ての対象者に適応できるものでは有りません。
対象者の身体状況を考慮し、安全に動作できるような環境整備の上、行うようにして下さい。

またぎ段差を少なくする

  • 浴そう縁のまたぎ動作 洗い場と浴そう内のかさ上げ
  • 浴そうの縁の高さ 洗い場のかさ上げ&シャワーいす
  • 脱衣所からの段差 脱衣所から見た時の段差
これら浴室の環境を改善する方法として、「浴そうの交換」、「リフォーム」という選択肢がありますが介護保険を利用して、より容易に「かさ上げ」できる方法が、ヤザキの福祉用具の導入です。「浴室すのこ」、「浴そう内すのこ」や「浴そう内いす」の活用で洗い場や浴そう内を「かさ上げ」する事で浴そうの縁の高さを低くすることが可能です。
まず、①番は、洗い場のかさ上げに、「すのこ」を使用しています。「すのこ」の清掃等を考慮し3分割に分けて製作しています。(フォーアクセスすのこ
②番は、浴そうのまたぎの高低差を軽減するため、浴そうの中にも、浴そう内すのこを設置してかさ上げをしています。写真のように浴そうの形にぴったり合わせて製作できるため、脚の置き場を気にすることなく、安心して浴そうに入ることができます。
③番は、浴そう脇のデッドスペースに入浴台を配置し、立位から座位またぎ(座位入浴)に動作を変更しました。もともと使用されていない場所で、転落等の危険もあった場所をうまく利用して入浴台を設置しています。このように入浴動作(2-4)の見直しとともに、浴室環境の整備を行うことで、より安全に安心して入浴していただけます。

まとめ/住環境整備の考え方

お風呂に入るということは、身体を清潔に保つ衛生面だけでなく、普段の生活の中での一つの楽しみでも有ります。お風呂に入りたくても入れない、これは自信喪失や本人のプライドに関わる問題でも有ります。また、プライバシーの問題から介助をお願いすることにも抵抗感を抱きます。出来ることなら自力で、そう願う気持ちは誰しも同じだと思います。入浴環境の改善によってお風呂に入れるようになるということは、日々の生活にハリができ、自立促進につながり、介助負担を軽減することで円満な家庭生活が送れるものと信じています。
ヤザキでは住宅改修(工事用)の部材福祉用具オーダー等の対応で、ご利用者様の様々なご要望に沿えるよう提案しております。「介護される人、介護する人」がより快適な暮らしを実現することや自立に向かえるよう、積極的にお手伝いしていきたいと考えています。
尚、ご不明な点、疑問等ありましたらお問合せ下さい。

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