1.世界の福祉事情(3タイプに分類される福祉国家)

近年、北欧諸国、中でもフィンランドに、情報産業、福祉制度、教育のレベルなど、さまざまな面で日本でも注目が集まっています。日本では北欧諸国というと『高福祉・高負担』というように一般にいわれてきました。ここでは、フィンランドをはじめ北欧諸国は、どのような特徴を持つ福祉国家であるのか、検討してみたいと思います。

■福祉国家とは3つのタイプに分けられる

福祉国家とは、国(社会・行政)が国民の幸せに責任を持つ国を指し、そのために行う政策を社会政策と呼びます。すべての先進国といわれる国々は福祉国家であります。しかし、どの程度国民の幸せに責任をとるかによって、福祉国家は、一般的に大きく三つのタイプに分類されています。それらは、自由主義型、保守主義型、普遍主義型(いろいろな名称が使われています)の3つです。
世界の福祉国家マップ
  • ①自由主義型(リベラル型) (アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリアなどの国々)

    このタイプの福祉国家では、民間部門の果たす役割が非常に大きく、民間保険によってまずニーズが満たされています。サービスの提供も民間ボランティア団体や家族が主体となります。
    社会保障に対する国の役割は、市場と家族の活動条件を整備する役割で、非営利団体・民間保険会社への補助金・税優遇措置等による間接的な助成を行います。社会保障は低所得者層に対する最低限度の給付に限定されます。自己責任の考え方が強く、税率も比較的低いことも特徴です。
  • ②保守主義型(またはコーポラティズム型) (イタリア、フランス、ドイツなどの国々)

    このタイプの福祉国家はヨーロッパ大陸諸国に多く見られます。これらの国々では、家族の責任と教会、ボランティア団体、労働組合の保険基金などに重点が置かれています。給付は市民権に基づく普遍的なものではなく、社会保障は家族の扶養者である男性の労働生活における地位と職種によって異なる傾向があります。多くの場合は、労働組合と雇用主の間の契約により被用者とその家族の社会保障が決定されます。
  • ③普遍主義型(社会民主主義型・北欧型) (デンマーク、スウェーデン、アイスランド、ノルウェー、フィンランド)

    第3のタイプは北欧型の福祉国家で、社会民主主義型、またはユニバーサル(普遍主義)型とも呼ばれています。北欧諸国と呼ばれる上記の5カ国がこのタイプの福祉国家です。
    その主な特徴は、北欧の研究者によると次の通りになります。
    • 他の民主主義国家よりも、北欧の国々は国家が国民の幸せに責任をもつ割合が大きく、これは全ての政策に国の関与が大きいということを意味します。完全雇用が経済政策および社会政策の目標となっています。
    • 北欧型福祉国家は高度の普遍主義に基づいており、これは全ての市民が彼らの労働市場の地位、または階級、居住地に関係なく、基本的な社会保障の給付とサービスを受けられるということを意味します。
    • 所得保障は、すべての市民への平等な基本保障と労働に基づく部分の2つによって成り立っています。
    • 所得移転(税金を通じて高所得者から低所得者へ配分する)が大きく、国内総生産に対する社会保障費の割合が高いという特徴があります。当然税金も高くなります。
    • 社会保険とともに、サービスに力を入れていることが特徴です。そして、地方自治体にサービスの供給責任があり、地方分権が高度に発達しています。サービスは主に税で供給され、その料金は小額です。
      また、公的にサービスが提供されるため、地方公務員の数が多いことも特徴です。
    • 所得格差が他の国々と比較して小さく、そのために貧困率と生活水準の格差も比較的小さいことも特徴です。
    • 平等ということが福祉国家の基本概念になっています。特に男女間の平等が重要で、女性の労働参加は世界でも最も大きく、家族においては両親が働くという形態が一般的です。
      社会政策の権利は個人に基づき、女性は男性に経済的に依存していません。
福祉国家について、さらに詳しくお知りになりたい方は、
・エスピン・アンデルセン(Espin-Andersen,G.) "The three Worlds of Welfare Capitalism”
・ハンヌ・ウーシタロ 『北欧諸国の社会保障』
・横山純一/山田眞知子共訳 『札幌学院大学商経論集』、第11巻第3号、1994年12月Kautto, M. et al “Nordic Social Policy” 1999, London &
New York. Routledge.をお読みください。 このページはこれらの文献に依拠しています。

ページトップへ