6.フィンランドの介護施設

■「施設ケア」から「自宅ケア」へ「大型」から「小型」へ フィンランドの福祉施設

かつてフィンランドでの高齢者ケアは「施設における長期ケア」が主流でした。
1975年頃からこの方針は揺らぎ始め、1980年初頭には高齢者福祉の方針は自立の促進、施設ケアの削減がはじまりました。以来、在宅ケアサービス、在宅介護、デイホスピタルの設備のために予算が投じられました。
1993年からフィンランドでは、自治体が国からの補助金を自由に配分し、使用できるようになり高齢者福祉に関しても個々の自治体の状況に応じた福祉対策が可能になり、住民の意志も反映できるようになりました。
また、福祉施設自体も大型施設から小型施設へと移行してきました。
その理由としては、隔離する施設という感覚から最期に住む家というイメージにするためで、施設内もできるだけ通常の家庭の雰囲気を出すようになっていきました。

■ボルヴォー・デイセンター

ボルヴォー・デイセンター
ここからは、フィンランドの福祉施設を紹介していきます。最初にご紹介する施設は、ボルヴォー市内唯一のデイセンターです。この施設は1992年に作られ比較的小規模な施設です。施設に隣接しているアパートには、障害があり設備が必要な方が住むアパートがあります。1室にはグループホームもあり4~5名で生活されています。それぞれの部屋には施設職員と直接連絡がとれる電話(インターホン)を一人一人が持って生活しています。現在、このアパートに入所するために待たれている方が約150名ほどいるそうです。フィンランドでも日本と同様に施設は不足しているようです。デイセンター内は手芸・陶芸・木工・物理療法室(リハビリ室)・プール・サウナなどの施設があり市内のお年寄りならば誰でも利用できます。日本のデイサービスは、「送迎→グループ活動→食事→入浴」などある程度決められた行動パターンとなることが多いですが、このボルヴォーデイセンターでは、より個人の意見(人権)を尊重し、誰でも気軽に訪問できる雰囲気をもった施設です。

グループホーム

デイケアセンター

■アポロ老人ホーム(ヘルシンキ市)

アポロ老人ホーム
アポロ老人ホームは、ヘルシンキ市内の石造りの古い建物の一室を改造し作られた施設で、2つの階で老人ホームを運営しています。痴呆症の女性12人を6人の職員がケアをする当ホームはヘルシンキ市と委託契約を結んでおり予算もヘルシンキ市から出ています。2人部屋7室、一人部屋3室、リビング2室、食堂も2室もあるホーム内では、窓辺に植木、壁には様々な絵画や装飾品などがあり、個人の家と同じように住む人の趣味が感じられる部屋です。
すべての部屋は、自分の部屋だと認識できるように異なるインテリアで飾られています。ヘルシンキ市への予算請求の中には、五感に良い刺激を与える花や植物・装飾品などもくわえられており、その必要性はヘルシンキ市も認めています。ホーム内も落ち着いた雰囲気で、痴呆性のケアだからといい寝たきりにはさせず、日中は必ず起こし椅子に座って生活をしています。

■クスタカルタ老人ホーム(ヘルシンキ市)

クスタカルタ老人ホーム
クスタカルタ老人ホームは、約50年前に建設された施設です。施設は11棟あり、入所者は600人。その全ての施設は地下道で繋がっているユニークな造りです。そのひとつに身体介護が必要な方が入所する施設があります。入り口付近には、その日出勤されているスタッフの写真、また食事の献立などが掲示されていて入所者がすぐに確認できるようになっています。入所者の部屋を見させていただくと、ほとんど自宅の部屋の雰囲気。こちらの施設では個人を尊重し、また家族の意見を積極的に取り入れて、より良い環境をつくりあげていくのだそうです。
スタッフ数は全部で430人。1人につき0.54人のスタッフが付く計算ですが、実際は3交代制勤務の為5人から10人を1人のスタッフが見ている状態です。スタッフ不足という点ではフィンランドも日本も同じようです。
施設入所の料金は収入によって大きく異なります。最高が収入(年金)の80%で最低が収入の20%です。その入所料金の中には食事・衣類・医療(手術含む)全てが含まれていて、小遣いは最低で80ユーロ(日本円で約1万円)です。入所にあたっての年齢制限などは基本的になく、身体の症状によって判断しています。ただヘルシンキ市内でもベット数が足りなく入所待ちがつづいているようです。例外として、担当ヘルパーや医師・看護士が緊急を要すると判断した場合は、優先して入所できるようです。

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